2009年09月09日

社会人野球

日本経済新聞9月8日付朝刊に掲載されている伊集院静氏(作家)のコラム「スポートピア」を紹介します。

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社会人野球の魅力

まれにみる好試合の決勝戦だった。
最後の打者がセンター方向にライナー性の打球を打った時には同点打かと思った。

野球が捕球した瞬間、東京ドームにいた2万9千人の両チームの応援団から惜しみない拍手が沸き起こった。

第80回都市対抗野球、ホンダとトヨタ自動車の決勝戦である。
さすがに出場36チームの頂点に立とうとするだけあって迫力があった。

テレビでの観戦であったが、両チームの勝利への気迫が画面からでもよく伝わってきた。

4−2でホンダが13年ぶり2度目の優勝を果たした。
勝利したホンダの選手、監督、コーチの目に涙が光っていた。
よほどこの時を待ち焦がれ、辛いトレーニングに耐えてきたのだろう。

敗れたトヨタも8回、9回の攻撃は逆転か、と思わせるチーム力を有していた。敗れて強しの感があった。

試合の攻防を見ていても感じたのだが、社会人野球とはこんなに熱い思いがぶつかり合う戦いなのか。素晴らしい野球だ・・・・・と思った。

そしてもうひとつ感心したのは両チームの応援団である。
試合終了の瞬間、両チームのナインに対して拍手を贈った。
アマチュア野球にしかない潔さが感じられた。

今夏、私は執筆に追われ、高校野球も観戦できなかった。
八月末、最終電車で仙台から上野駅に着き改札口に向かっていると、プラカードを手にした人が角々に立っていた。

カードを見ると仙台の銀行の名前があり、電車の案内をしていた。
おかしいな。最終の仙台行きはとっくに出てしまっているのに。
聞けば都市対抗野球の応援団のために臨時電車が出ている言う。
そうか、今、熱戦が続いているのだ。

翌日、仙台に戻り、早めに仕事を切り上げテレビの前に座った。
両チームの応援団の熱気に驚いた。

そういえば私が少年時代、社会人野球の地区代表になると町のあちこちに幟(のぼり)が立ち、市民、町民が応援したものだった。

私の故郷(山口県防府市)には協和発酵のチームがあった。
高校の野球部の先輩も何人か所属していた。
代表が決定すると少年たちは球場に練習を見に行ったものだ。
エースは町を歩いているとヒーローだった。
職場の代表は町の代表だった。親しみのある野球だったのだ。

今年限りで休部が決まっている日産は4強で終わった。
名門チームの休部は不況によるものであっても残念このうえない。
この社会情勢であるからこそ職場が一つになる活力が必要に思えた。
一日も早く復帰して欲しいものだ。

プロ野球はプロならではの醍醐味がある。
今回、決勝戦を見ていて、社会人野球の良さは“家のぬくもり、熱気”に似たものがあった。

社会人野球を観戦すれば、野球の違った魅力を発見できる気がした。
ぜひ一度観戦に。

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posted by ホーネッツ at 01:51| Comment(0) | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする